熊野季節物語り・杉の立ち皮剥:1

熊野市 平成15年8月28日(木)撮影

熊野市五郷町湯ノ谷にある「かやの木館」は、尾中鋼治さんの旧宅になり、その屋根の杉皮の葺き替え作業の取材を今年4月におこないました。
その屋根の葺き替えに使う杉皮は、「立ち皮剥」という伝統的な杉皮の剥ぎ方をします。熊野でも今は尾中さん一人しか出来ない技です。その「立ち皮剥」をご紹介していきます。

道具の手入れ
皮剥包丁

まずは、道具の手入れから始まります。砥石で刃を研ぎます。

これは杉の皮に切れ目を入れる「皮剥包丁(かわはぎぼうちょう)」という道具です。刃渡りは約25センチほどです。

ハギ棒(はぎぼう)
尾中さんの装備

これは、皮を剥いでいく時に使う道具「ハギ棒(はぎぼう)」という道具です。

カルコ

これが尾中さんの装備です。腰に「さらし」を巻いて、そこに皮剥包丁とハギ棒をとめます。尾中さんのお父さんの代では、さらしではなく着物に使う帯を巻いていたそうです。
これは普通のベルトだと、道具の重量が片側にかかるため疲れやすくるなるそうですが、さらしだと均等に重量がかかり楽なんだそうです。

カルコ

木に巻き付け上に上がるための足場を「カルコ」と言います。普通の木に縄を縛っているものです。

【一口メモ】杉の皮剥は、樹液が杉皮と木の間を流れている今の季節が良いとされ、新月(月の出ない日)を選んで皮剥をおこないます。これは、月の出ている時に皮を剥ぐと、皮に虫が付き食べられてしまうからだそうです。
もっとも良いのは土用の新月だそうです。
シイタケのほだ木も新月に切ると長持ちするそうです。

カルコ」は、必ず木の右手から回して縛り付けていきます。全ての作業にきちんと意味があります。

皮剥の作業に入る前